夏彩憂歌
あの日流した俺の涙を、彼女はどんな気持ちで見てたんだろう。

優しく優しく抱きしめてくれた彼女のぬくもりだけが真実だった。


俺はここにいて、彼女は日本にいる。


「待ってる」なんて約束でお互いを縛るべきじゃないと彼女は言った。

誰より大事な彼女の幸せを考えたら、本当にその通りだと思った。

だから、今でも俺はこの青白い月から、彼女の幸せを祈ってる。


他の男と一緒になっててもいい。

悔しくてたまんないけど、仕方ない。

俺の大好きだったあの笑顔が、守られているならそれでいい。

本当は俺の手で守りたかったけど。



今すぐ日本に帰って抱きしめたい。

だけど、「今更どの面さげて彼女の前に現れるつもりなんだ?」

あの青白い月は、そう言ってる気がする。


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