夏彩憂歌
「どうしてっ……」

彼はしゃがみこんで、頭を抱えた。

こらえてはいるのに、嗚咽が漏れる。

アスファルトに、水滴の痕がぽつり、ぽつりと染みこんでいった。

彼の、世界で一番大切な彼の、涙。


あたしはこれ以上ないほど胸が痛くなって、息をするのも忘れた。

本当に、ないんだろうか?



…胸の痛みで、心臓が破けてしまうことは。



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