手を振って、『じゃあね。』
『ジリリリリリリリリリ…』
え、あ、…朝か…。
目覚まし時計をバシッと叩き、時刻を見ると午前六時。いつもと変わらない日常がそこにあった。
「なんだろ、あの夢。」
なんだかカレカノみたいな感じだったなー。背が高くて、青がかった黒髪で、学ランを着てて、とにかくカッコイイ。
…私ついに頭こじらせたのかな…。
『結彩ー!起きてるのー?』
「起きてるよー!今行くー」
母が私を呼ぶ声が聞こえる。やっぱりいつも通りの日常風景だ。変化がなさすぎて、夢の方が現実に思えてしまうほど。
「おはよー。」
「おはよ。今日ね、柚の誕生日だから帰りにケーキ受け取ってきてくれない?」
「えーっ。なんで私が…。」
柚というのは私、結彩の妹。私より二つ下の小学五年生だ。
「お母さん今日忙しいのよ。お願いね。」
内心柚が取りに行けばいいじゃん、なんて事を思ったが、妹にケーキを持たせるのは危険すぎる。そう思うと嫌な気持ちがさっと引いたような気がした。
「んー。じゃあ、あそこだよね。いつもの『お菓子の家』。」
「そうよー。よろしくね!」
朝食のパンをもぐもぐと口に含み、ゴクリと飲み込んだところで、妹が起きてくる。
「おねーちゃん…おはよー。」
「おはよ。あんた今日誕生日なんだよね、おめでと。」
そういうと素直なもんで、妹はぱっと顔を明るくした。
「えへへ。もう十一歳になるんだよ!」
まだまだ子供っぽい可愛い妹だが、もう十一歳にもなる訳か。反抗期に対抗する準備でもしておかなければならないな、なんて。
「柚が十一歳になったら、結彩と一歳差になるのよねー。結彩は遅生まれだから。」
ぐ…。遅生まれ…。まあ、そうだ。私はたしかに三月生まれだし、背も低いから十二歳です、と言うと小学六年生に間違えられる。(酷いもんだ)
「まぁ、取り敢えず行ってくるよ。行ってきまーす。」
「いってらっしゃい!!」
妹の甲高い声が聞こえた。
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