淡く儚い恋物語 Ⅱ ~貴方との夢~
「言ってなかったか?」
しれっとそう言う悠雅は、いつもより締め付ける“タキシード”という着慣れない服のせいか顔を歪める
「家族って……誰が?」
俺の言いたかった疑問は海に先を越され
「澪と天童の野郎に決まってんだろ」
あっさり解決されてしまった
「え…嘘だろ?」
この華やかな場で蘇るのは消したいほど苦々しい記憶
悠雅を庇ったみっちゃんがスローモーションのように倒れていく場面は、今も瞼の裏に焼き付いている
「そういえば……名字…」
「名字?」
海が呟いた言葉は一瞬意味が分からなかったけれど、すぐにピンと来た
「「……瀬織」」
……同じだ
2人の名字は同じだ
……なんでそんな単純なことに気が付かなかったんだ?
2人呆然としていると
「…気づかねぇーのも無理はない。
澪は飛鳥を名乗っていたし、興の方は天童の名の印象が強かったからな。」
悠雅がその困惑から救ってくれた
確かに瀬織 興は“天童”のイメージが強かったな…
「澪ちゃん学校でも飛鳥だったしね…」
…なるほど
納得出来なくもないような
「あの交戦が始まる前から澪は不安そうにしてたな…」
思い出すように紡がれた言葉に首をひねる
「テメェーらにあんな奴と兄妹だって知られたら、拒絶されるかもしれないって。」
「そんなっ…!!」
「……そんなこと」
……ないに決まってんだろ