淡く儚い恋物語 Ⅱ ~貴方との夢~



「ねぇ、どこに向かってるの?」







「さぁ…」








「……もう」






さっきから何回聞いただろう






なのに返ってくるのは『さぁ』とか『着いたら分かる』とかいい加減な返事ばかり









子供達と一緒に後部座席に座った私は、悠奈と真緒が寝てしまってからは退屈で窓の外を眺めるしかすることがなかった











だからかもしれない




私はすぐに気がついた









「ねぇ、悠雅
ここって…」









見覚えのある景色



懐かしさも残る場所



そして、私の拠り所の1つ











「あぁ、お前の母親に挨拶しに来た」








「……悠雅」









毎年、どんなに忙しくても…どんなに離れていても…興に拉致られていたときでも訪れていたお母さんのお墓










車がゆっくりと止まると、悠雅はどこから出してきたのか立派な花束を抱えて運転席から降りた











そしていつものように、私の座る席に一番近いドアを開けてくれる










「悠奈と真緒は?」








「寝かせておけ」








「…分かった」








そっと2人に布をかけ、悠雅の手を取り私も車を降りた








「いつそんな花束買ったの?」







お母さんのお墓に向かいながら聞いてみる








「ここに来る間、お前1回コンビニ寄ったろ?
そん時近くに花屋があったからな」










「あ、あの時…」








そう言えば、真緒がトイレに行きたいと駄々をこね始めたからコンビニに寄ったんだっけ









「…ありがと」







お母さんのお墓にこんな豪華なお花飾ってあげられたことないから…きっと喜ぶだろうな











「いや、俺もここまでしないと許してもらえる気がしないからな」











そう言ってクシャッと私の頭を撫でる









「何を許してもらうの?」










「すぐに分かる」









……やっぱり、教えてくれないんだ







でも…


悠雅が『すぐに分かる』って言う時は本当にすぐ分かっちゃうから






「……ん」







その時まで待っていよう





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