蜜愛フラストレーション
一.けんもほろろ

「ありきたりだ」

この言葉を聞く度、心には巨大な岩がドスンと大きな音を立てて乗るような感覚に苛まれてしまう。

同時に、徹夜と休日返上をミルフィーユのごとく重ねてどうにか仕上げた企画書は、冒頭のひと言によって呆気なく無用の長物と化した。

「資料はよくまとめられているし、説得力もあるが、前回同様にそのテーマに固執し過ぎだ」
「はい、申し訳ありません。ありがとうございました」

すべてが水の泡ではないにしろ、余暇を犠牲にして作り上げた資料をこの息苦しさとともに放り出したい気分。それをグッと堪えながら、上席の課長と係長に一礼する。

あとは満員御礼のミーティングルームの中で、ぽつんと空いた中間地点にある席まですごすごと引き返すばかりだ。

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