蜜愛フラストレーション
もちろん私は何もしない。けれども妙な噂が広まらないよう、毅然とした態度で臨むつもりだ。
これからは些細なミスが命取り、いつどこで手落ちがあるかも分からない。ひょんなことから揚げ足取りをされないよう、他人には一切を語らない。
これらを言いつけられているので、片がつくまでは異常に口が堅くなるはず。
警戒に警戒を重ねながら、あくまでいつも通りを装う。これが本当に難しい、今さっき痛感した。
始業時刻にチームから呼ばれたので合流すると、そのまま打合せに入ることになった。
指揮を執る優斗が私を改めて紹介し、今後のスケジュールなどを確認していく。
課長の指示、さらに優斗が了承したとあって、課内の反応はさほど悪くないが良くもない。
この状況を好転させるには、あとは私自身が頑張らなければならないと気を引き締めた。
和菓子と掛け合わせるためには改良が必要となる。そこで私は、第1グループの試作担当者である5期上の女性のサポートに付くと決まった。
こうして第1グループにデスクを得て仕事を始めてからの数日間は、環境に慣れることに手一杯。
同じ課内でもやはり雰囲気が異なり、また試作担当の女性も結構な態度で仕事がし辛かったのもある。
彼女はひとりで試作開発室にこもるのが常。そちらに顔を出せば、「邪魔。気が散るのよ」と睨まれる始末。
社内メールに返信を貰えないことは構わない。というのは、私宛てのFAXや付箋メモがごみ箱に捨てられていたから。
ちょうど席を立った私が忘れ物に気づいてフロアに戻った時、彼女が私のデスクから捨てるところを目撃してしまったのだ。
シュレッダーにかけられなかったことは温情なのかもしれないが、仕事を滞らせる幼稚な嫌がらせには心底呆れた。
そのため事務の子にお願いし、第2グループの私のデスクに伝言メモや届いたFAXを置いてもらうように変更。彼女にはメールを止め、その場で直接返事を貰うことにした。
どうやらこのことには優斗も気づいたのか、心配してすぐに連絡をくれた。