蜜愛フラストレーション


私たちの関係が変化したのと同時に、五十嵐さんは突如本社から大阪支社に移っている。

これまでの数々の悪態に加え、私への悪行が決め手という。なお、私の一件について知る者は少ないそうだ。

専務も庇いきれない証拠を突きつけてやった、と課長に先日教えて貰ったので事実なのだろう。

問題児の彼女がいなくなった職場の雰囲気は一気に改善し、優斗も目に見えてのびのび働いていたのに。

左遷されたはずの彼女はどういうカラクリか、たった一年で本社に返り咲く。そして今、再び優斗を苦しめている。

ちなみに専務も一癖あり、娘を大阪に追いやった課長への当たりが強いことは有名だ。

ただ常務に執行役員や社長など、課長には多くの味方がおり、大鉈を振れずにいるらしい。

それでも、社内全体が彼女を恐れている。……明日は我が身、敵に回してはいけないと。


食事を終えると百合哉さんと一緒にホテルを出て帰宅し、すぐに手早くシャワーを浴びた。

それからスマホを片手にベッドに寝転ぶと、ただ一件の連絡を静かに待ち続けた。

あの頃はひとりで足掻いていたけれど、今はひとりじゃない。

姑息なやり口には負けるつもりはない。それでも今は優斗の頑張り時だから、私は待つだけ。

真っ白な天井を仰ぎながら、この状況が好転することを切に願っていた……。


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