蜜愛フラストレーション


出社後は早く出社していた紀村さんと慌ただしく新商品について打合せをする。

五十嵐彩から萌を守るための一策として生まれたのが、洋菓子と和菓子のコラボ案。

課長の考えは突飛なようでいてじつに打算で満ちているのだ。

また、女傑と呼ばれる彼女にも隙など見当たらず、役員へのプレゼンも問題ないだろう。

時間も差し迫ってきたので打ち合わせを終えると、「色々とすまない」とだけ告げた。

「外野が少々うるさいですが、ほっときましょう。加勢なら幾らでもするけど?」

淡々とした口調で返されたひと言に苦笑する。

当然ながら、昨日で萌との関係は白日の下にさらされた。いや、自らさらしたのだが。

ちなみに出社後すぐにミーティングルームに籠っているので、五十嵐彩とはまだ顔を合わせていない。専務とふたりで烈火の如く、怒り狂っているのだろう。

あの親子から守るために付き合っているのを隠していただけのこと。——もう我慢も遠慮もしない。


その後、午前中に役員室へ出向いたのは、課長と俺と紀村さんの三名。

ずらりと顔を揃えた役員がたが紀村さんのプレゼンに耳を傾けながら、商品化目前のスイーツを味見している。

俺がかつて提案したのは、ほのかな甘味のパッションフルーツを用いたカップ状のジュレだ。

そこへ合わせたのが、萌と紀村さん合同案の豆乳と十勝産の小豆をプリンにしたもの。

下層をプリンで固め、上層には果肉入りのパッションフルーツゼリー。仕上げにクコの実を中央に一粒と、抹茶入りのホイップをひと絞りしたものを添えてある。

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