蜜愛フラストレーション
自嘲笑いを浮かべて返した声は、やけに冷たいもので。暗に聞きたくない、と意思表示をしていた。
「……無理に投げやりな態度を取らせてごめん。もっと怒って、罵倒して、とことん詰ってくれ。俺はそれだけのことをしたんだ。
信用に足らない男で構わない。けど、萌を愛してる気持ちに嘘はない。本音で向き合って誠意だけでも伝えていきたいんだ。もちろん勝手なのは承知の上だよ。……でも、俺は萌と離れたくない」
「……っ、」
肩口に顔を埋めた優斗が、消え入りそうな声で紡いだ。甘くて鋭い小さな棘が胸に突き刺さっていく。
同時に実感してしまう。——彼のこの優しさが懺悔から来ているから最後の最後で信じきれないのか、と。
「ねえ、だったら教えて?……わ、たし、長過ぎた、の?……許しどころが分かんない」
言葉に詰まりながら、ずっと言えずにいた本音を漏らす。
この不安定な関係に、この半端な距離だって。一歩踏み出したくても、また失敗する怖さが取り巻いて動けなかった。
もちろん、何度も何度も離れようとした。彼をいい加減に自由にしてあげよう、と悩んでもきた。
それでも彼の変化や優しさを実感し、愛される心地よさには敵わなくて。過去を過去には出来なくなっていた。
いっそのこと異動希望などで、物理的に離れてしまえば良かったのに。別れの理由も考えようとしない私は、おざなりに関係を続けたのだ。
「俺を許さなくていい。でも、離れないで欲しい」
「……難しいこと言うね」
「萌は甘やかすだけは望まないしね」
「……かもね。って!?」
暫し訪れた無言の時に腕を解かれる。ホッとした刹那、今度は膝元から抱え上げられてしまった。
一気に目線が高くなり、不安定な私の背中と膝裏を支える力強い腕。そろりと視線を落とせば、すぐ目の前には秀麗な優斗の顔が。
「離してって言ったでしょ!?何これっ!」
「うん、そうだね」