蜜愛フラストレーション
おまかせコースに追加で好みの鮨を頼み、小鉢と茶碗蒸しに水物と食べ終えた頃にはもう満腹。
至福に浸っていたのも束の間、ここが高級店であると思い出し、血の気が一気に引いていく。
「萌ちゃん、なんか顔面蒼白じゃない?あ、今度はよろしくね〜」
微笑を見せるユリアさんは、優斗の誕生日の前祝いにと支払いを済ませてしまう。
私が気遣うと見越し、敢えて“次”と言った彼女には感謝するばかり。出来た女性である、本当に。
「悪いなユリア、ごちそうさま」
隣の優斗から声を掛けられ、彼女はそちらに視線を向けた。その顔に笑みを浮かべているものの、どこか含みもあり薄ら寒い。
「どういたしまして〜。その感謝の気持ちは私の誕生日に利子付けてよろしくぅ」
「海老で鯛どころか、伊勢エビで大間のマグロを釣るってか」
「やーだー、女の策略には既読スルーじゃないと〜。ねー、萌ちゃん?」
高らかに笑いながら彼女が同意を求めてくる。ただ、反応に困る質問は聞かないで欲しい。
苦笑いを浮かべていると、傍らの優斗から「どうした?」と気遣われてしまう。
「……うーん、上には上がいるっていうかね。
——実際に、甘エビで大間のマグロを釣っていた人のことを思い出しただけ」
「……は?」
「ちょっと何その話!教えてーー!」
反応の違いはあれど、続きを促されて話し始めることにした。——私がよく知る事案について。