蜜愛フラストレーション
「……それ、もしかしてお姉さん?」
話し終えたところで優斗がすかさず聞いてくる。確信めいた口振りに疑問を感じながら頷いた。
納得したような顔つきを見て思い出す。そういえば、付き合っていた頃に姉がいると話していたことを。
——さっきの強者とは、実の姉である。
武勇伝を持つ姉も今は旦那さんひと筋。彼女の人生観を変えたという義兄を紹介された時、両親はとても安堵していた。
「じゃあ、お姉さん一家はずっとドイツに?」
「あ、うん。ずっとシュトゥットガルトっていう所に住んでて、時々スカイプとかテレビ電話で話してるよ」
「もしかして、有名メーカーの本社がある所?」
優斗に「そうそう」と微笑み返す。
噛みそうな地名のここには有名なドイツの車メーカーの本社がある、と前に姉から教わった。
姉とは昔はよく口喧嘩をしたし、外見や性格、服装の好みだって真反対。それが今は良好な関係とは不思議なもの。
きっと互いが大人になり、離れたことで家族の大切さに気づいたのだと思う。
「姉妹とかいいなぁ。あーあ、萌ちゃんのお姉さん会ってみたーい」
向かいのユリアさんが頬杖をつきながら口にした。建前は言わないと分かっているので、そう言われると嬉しい。
「本当に似てないけどね。姉は明るくて綺麗だから妹的にもオススメ物件だよ」
「やだぁ、家じゃないんだからー。でも、萌ちゃんが太鼓判押すなら余計に会ってみたいわ」
「だったら、今度一緒にスカイプしようよ?その時、姉と可愛い甥っ子も紹介するから!」
「するするぅ!」
嬉しそうなユリアさんと騒いでいたら、そこで私の頭を撫でた優斗と目が合う。
同族嫌悪とよく言うが、姉とユリアさんは気が合うに違いない。
どうやら彼も同じことを感じていたようで、これぞ妙なシンパシーですか……。