蜜愛フラストレーション
八.つぼにはまる
「おっはよーございまーす」
週明けの月曜日。気だるさと気合いの入り混じったフロアに、呑気かつ大きな声を響かせながら現れたのは後輩のハルくんだ。
「おはよう」と返せば、にこにこ笑いながら向かいのデスクに着いた彼はじつに分かり易い。
「ハルくん良かったね、オメデトウ」
頭に満開の花が咲き誇ったかのような表情が、先週末の合コンの結果をありありと示している。
「……チッ、」
隣から見事な舌打ちが聞こえたが、視線を移せば火種を生むので聞こえなかったふりをする。
「てか、蔵田さんなんかあったんすか?」
しかし、こちらの気遣いを無にしたのは彼本人。
もうちょっとどころか、素晴らしく女性の機微に疎すぎると詰ってやりたい。
顔を顰めたくなるのをどうにか抑えた私は、そろりと蔵田さんの様子を窺う道を選んだ。
「今すぐ、バカ発見器が手に入らないかなぁって考えてたの」
「あー、それで黒い顔してたんすか」
今すぐその口を閉じろ!と叫びかけるが、彼女から不穏な空気が漂い始めたのでそれも出来ず。