蜜愛フラストレーション
その後、うどんをどうにか胃に収めきると、まだ食べ終えていない松木さんに断りを入れ、ひとりフロアへと舞い戻った。
週明けかつ新プロジェクトがスタートし、休憩は後回しで仕事をする人の姿が多くみられた。
うかうかしていられない、と足早にデスクを目指す。だが、近づくにつれて、辺りは不穏な空気に包まれていた。
「この写真、なんか微妙じゃないっすか?」
「どこがどう微妙だって言いたいわけ?」
「なんか暗さが引き立ってるというか。なんか暗い?あ、ジェネレーション・ギャップかもしれないっすね」
聞こえてくる会話に、板挟みの立場にある私は、真夏にもかかわらず背筋が凍る思いだ。
そっと自席には着けたが、すぐ隣で南極の氷と燦々と降り注ぐ太陽が戦っているようなもの。
今のところ、加減を知らない太陽光に南極の氷は溶け気味だが、無反応の彼女の顔は笑っていた。……恐怖に戦きたいのは私だよ!
しかも、その写真を選んだのは蔵田さんのはず。先輩に指摘する彼には、危機回避本能が働いていないと思われる。
何というタイミングで戻ってきてしまったのか、と自らの間の悪さを呪いたくなる。なんだか胃がしくしく痛み出してきたわ。