蜜愛フラストレーション
そんな課長と優斗はやはり裏で繋がっていた。でなければ、この話を知る筈もないのだから。
先ほどより軟化した語調から彼が怒っていないことは分かるが、朝イチの件を私本人から聞き出すつもりのようだ。
「……行きたくない」
ぽつり、と小さな声を出せば、くすりと喉を鳴らして笑うとはじつに質が悪い。
「地元ラブって言ってるのに?」
こんな言葉をイイ顔で投げかけられれば、ぐっと言葉に詰まってしまう。
郷土愛はもちろんのこと、何ならホームシックに陥ったばかりで。名駅のふたつのビルや八丁味噌のお味噌汁も恋しいですが何か。
されども、これは私の中にある迷いの心を試している。それを分かっているから、ここで引くわけにはいかない。
週末にようやく結論の出た、ふたりの今後を守り抜きたい。そのシンプルな感情を手放すつもりはないから。
「……もう、逃げないって決めたから」
まっすぐ茶色の双眸を見据えて言い切った。——どんな事にも逃げたりしない、と伝えたくて。
彼の考えは分からないものの、その眼差しに翳りは見えず。そのことにホッとしながら話を続けた。
「課長が言ったことは事実だから、私は何もしないし言わない。……これで良いよね?」
恐る恐る確認したところ、そこでようやく眦を下げた優斗は静かに口を開いた。
「うん、それが一番の得策。暫くあとは任せてくれる?」
静かに頷くとこちらまで来た彼は私の頭をポンポン、と何度か優しく撫でてくれる。