蜜愛フラストレーション


ユリアさんいわく、ゲストルームにはミニキッチン、バストイレがあり、夜遅くなっても気にする必要はないという。

普段は付き合いで外食も多いらしい。私も繁忙期は終電を逃したり、徹夜もざらにある。なので、食事は帰宅が重なった時のみ共にしようと決まった。

平日は通いのハウスキーパーが入るので掃除洗濯も一切不要。クリーニング等の依頼も書き置きを残せばして貰えるという。

さらに同居中は会社まで送迎すると言われたが、これには激しく拒否した。

しかし、ユリアさんの耳は都合よく聞こえなくなる。笑顔で知らん顔をされ、聞き入れるつもりもゼロらしい。

至れり尽くせりの環境に戦く私は一般的感覚のはずだ。……もうワンルームのアパートがすでに恋しい。


栄養満点のユリアさん特製の食事を終えてから、玄米茶を飲みリビングでひと息つく私たち。

この豪華さにはとても慣れそうにないけれど、ユリアさんが日常を隠していた気持ちは何となく分かった。

非常事態とはいえ、素性を明かしてくれた彼女には感謝だ。不謹慎だけれど、私を信頼してくれたことが嬉しかったから。


「はい、ここの鍵ね。使い方が分からない時はコンシェルジュに頼って?頼んどくわ」

「何から何までありがとう」

簡単にセキュリティについて説明をして貰うと、エントランスや玄関、客室などで必要なキーを受け取る。

「そうそう。“もしも”はないと思うけど、ちゃんと鍵はかけなさいよ〜?」

「忠告ありがとう。たとえ寝込みを襲われても蹴り飛ばすから安心して?」

「やーだー、暴力反対ー。てか、萌ちゃんは寝起き悪いって、優斗言ってたかもぉ」

平然としながらも、いずれ優斗には教育的指導をしようと心に決めていた。


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