嵐の夜に。【短編】
虹と先生
夏休みになったばかりの、7月下旬のある日。
わたしは赤点を取った現国の補習授業を受けていた。
「宮下(みやした)、ここでの主人公の気持ちは?」
「ええと……」
先生からの問いかけに、答えを迷った。
ちらっと先生を見上げると、メガネの奥の冷ややかな目とあった。
ひええええ。
わたしは現国の教師である枝野(えだの)先生が苦手だ。
元々、国語が苦手ということで、先生にも苦手意識が働くのかもしれないけど、
先生ってなんか怖い。
いつも無表情で笑わないんだもん。
変に真面目すぎるというか。
教師は生徒と仲良くなる必要がないって思っていそう。
服装も、ポロシャツとかラフな格好している先生だっているのに、
枝野先生はいつもスーツにワイシャツ。
今は夏なので、スーツの上着はなしで半袖のワイシャツ姿だけど、ネクタイはきっちり締めている。
先生の辞書の中に、クールビズって言葉はないのかもしれない。