嵐の夜に。【短編】
部屋の両端と、閲覧テーブルの向こうに本棚がある。
先生は窓側に並ぶ低い本棚から、大きくて薄い本を取りだした。
「先生、それ絵本じゃないですか!」
「絵本って大人になってから読んでも、意外といいものなんだよ」
「でも、さすがにもう少し文字があっても読めると思います。
というか、なんで高校の図書室に絵本なんてあるんですか」
思わず笑ってしまった。
「うちの図書室はわりとなんでもあるよ」
先生は今度は奥の本棚から一冊取り出した。
「バスケものはないけど、野球ものなんてどうだ?」
渡された本には、小学生シリーズと書かれていた。
「……先生、これも子供向けなんじゃ?」
幼児向けから小学生向けに昇格したとはいえ、喜べない。
そんなに本を読めないと思われているのか。
あ、いや。