嵐の夜に。【短編】
「うん、枝野先生ってさ……」
「枝野先生?」
「あ、いや、なんでもない」
「なあに? 怪しいわね~」
裕子がにやりと笑いながら強めのパスを出してきた。
いつも図書室にいるのかな?
そう聞きたかったけど、図書室に行かない裕子が知ってるわけもない。
先生と一緒にバスケをして、図書室で虹を見たあの日。
あれから、枝野先生のことばかり考えてしまう。
投げ返したボールの行方を目で追っているのに、脳裏には、先生の笑った顔が浮かんでいた。
部活は昼前に終わり、わたしは一人で図書室へ向かった。
補習の日は図書室に他に誰もいなかったし、図書室はお休みだったようだけど、
家に帰って学校からのお知らせのプリントを確認して、
夏休みも月水金の週3日、図書室が開いていることを知ったんだ。
図書室に入ると、カウンターで何か作業をしていた先生と目があった。