嵐の夜に。【短編】
まだ20代半ばの先生で、うちの学年の教師の中で一番若くて、一番、わたしたちに年が近い。
それなら、もうちょっととっつきやすい先生でもいいのになぁ。
そんなことを思っていると、先生が低い声を出した。
「宮下」
「……悲しんでいる?」
プリントに書かれた選択肢から一つを選ぶ。
選択肢は、怒っている、悲しんでいる、楽しんでいるの三択だ。
楽しんでいるではないことはわかる。
「不正解」
「ええ~…」
わたしはがっくりと肩を落とした。
「どうして悲しんでいると思ったんだ? 描写に、怒りに震えてとあるだろう」
「だって……どうでもいい人相手には怒らないじゃないですか。怒らなきゃいけない状況が悲しいかなって」
先生がため息をついた。