嵐の夜に。【短編】
「あーダメだ!」
わたしは借りてきた本を投げ出すと、ベッドに大の字に転がった。
家に帰ってお昼を食べるとすぐに『源氏物語』を読みだしたけど、30分でアウトだ。
昔の本ってすごく読みづらい。
面白い、面白くない以前の問題だ。
現代語訳なのに言葉の意味がわからなかったり、
平安時代のことなんてよく知らないから理解できなかったり。
こんなの、皆わかるものなの?
自分が情けなさすぎる。
「あ、やば」
思わず涙がにじんで、目を手で押さえた。
横向きになって、体を丸める。
先生は国語教師だもん。
きっとこれを読めるような賢い女性が好みのはず。
国語がいつも赤点ぎりぎりの、母国語が怪しいわたしに惹かれるわけないんだ。
そう思うと無性に泣きたくなった。