嵐の夜に。【短編】
先生が一番上に置いた漫画を取って、開いた。
「『源氏物語』を漫画にしたものだ。
絵がある分、小説よりもわかりやすいし、結構面白い。よく書けている」
わたしは漫画を覗きこんだ。
「かなり昔の漫画なんですか?」
「ん? そうだな」
先生は一番最後の奥付を開いた。
「1巻が昭和55年発行だな」
「55年!? わたし、生まれてませんよ!」
「安心しろ。先生も生まれてない。
この漫画の後にも『源氏物語』を題材にした漫画はいくつか描かれているが、これが一番面白くてわかりやすいと思う」
「そうなんですね」
わたしは他の巻に手を伸ばして、中を見た。
「これ、貸してやるから読むといいよ」
「ほんとですか!? ありがとうございます」
それならば貸出手続きをして来ようと、立ち上がった。
「あ、待って」