嵐の夜に。【短編】
愛と光源氏
先生から借りた漫画は面白かった。
女御とか内裏とか、今では使わない単語も当然出てくるけど、
それが何を指すのか端っこに注釈もあって理解もしやすい。
絵で描かれているから、状況や人間関係もわかりやすい。
続きが気になってしまうので、夜中になっても読み終わるまで読んだ。
小説ではあんなにわからなかったことが、嘘のようだ。
文字だけよりも絵の方が理解しやすいのかな。
何度も何度も繰り返して読んで、
お盆を明けた頃、ようやく先生のもとへ返しに行った。
図書室のカウンターの中に先生がいたので、テーブルにお礼とともに置いた。
「どうだった?」
「え~と、面白かったです」
本心ではあるけど、ちょっと迷った答えだったので、先生には見透かされてしまった。
「何か、含みがありそうだな」