嵐の夜に。【短編】
クスリと笑う顔を見て、胸がときめく。
先生の笑った顔を見る機会がどんどんと増えてる気がする。
「何が気になった?」
先生に顔を覗きこまれ、わたしは柄にもなくうつむいた。
「あの、本当に面白かったんです。でも、それが不思議というか……」
「ん?」
「だって、光源氏ってサイテーじゃないですか」
そう言った途端、先生がぶっと吹き出した。
ここ笑うところ?
わたしはむっとなって先生をにらんだ。
「だって、藤壺の女御を愛しているくせに、次々と他の女性にまで手を出して。
あれでは藤壺の女御も紫の上もかわいそうです。
せめて藤壺の女御が亡くなった後は、紫の上だけを大事にしてくれたら良かったのに」
「そうだな」
「先生もあんな風に色んな女性を愛したいって思ってます?」
先生はさっきよりも大きく吹き出した。