嵐の夜に。【短編】
一夫多妻制の世界。
それがどういうものなのか、想像もつかない。
でも、こうやって物語として読む限り、男も幸せじゃなかったかもしれないけども、
それは男が自分で選んだこと。
どちらかというと、自分で選ぶことも許されず男に振り回される女はもっと幸せじゃなかったように思えてしまう。
「紫式部は今のように、男女平等に愛し愛される世界を望んでいたのかもしれないな」
「先生……」
「と言っても、現代の私たちの常識で推し量るとそういう推測も立つというだけで、紫式部の伝えたかったことは全然違うかもしれないけどな。
さて、小説の方はどうする?」
先生は立ち上がってカウンターを出ると、本棚に向かった。
前にわたしが『源氏物語』の本を取ったあたりに来ると、三冊抜き出した。
「現代語訳してる人は何人かいるんだけど、これは読みやすい方だと思うよ」
先生はそう言いながら、本を差し出した。
「内容をだいたい把握したところで、もう一度チャレンジしてみるか?」