嵐の夜に。【短編】
「やっぱりわたしには難しかったみたいです。読むことだけに精一杯で、面白いかどうかまでは……。
漫画が面白かったから、かろうじて興味もって最後まで読めたってところです」
「そうか」
先生は呆れるでも怒るでもなく、微笑んでいた。
「とりあえず読むことも大事だからな。
たくさんの本を読めばそのうち、『源氏物語』をもっと楽しく読むこともできるだろう」
「そんなものですか?」
「ああ。それに、本を読めば自然と漢字なんかも覚えていくしな。
国語が苦手な宮下にはちょうどいい勉強になるぞ」
先生がにやっと笑う。
その表情が意地悪で、わたしはふてくされた。
「そんなすぐには結果でないと思いますけど、二学期のテストはもうちょっと頑張ります」
「そうしてくれ」
和やかに笑いあっていると、空がピカッと光った。
「わっ」
今度はいきなり真っ暗になる。