嵐の夜に。【短編】
わたしが手を引いてるので、先生も当然ついてくる。
いつもの澄ました顔からは想像できないような、慌てた声が後ろから聞こえて、
わたしはクスリと笑った。
体育館の出入り口にある屋根の下にたどり着くと、先生の手を放して息を整えた。
「閉まってるけど、大丈夫なのか」
「うちの学校、体育館に鍵かけてないんですよ」
わたしは扉を横に引いた。
広い床が見えた。
いつもは昼間なら電気のいらないくらいに明るいんだけど、今日はこんな天気なので少し暗い。
でも、さすがに勝手に電気をつけるのは気が引ける。
反対の扉も左に引いて、全開にした。
少しはマシだろう。
靴と靴下を脱いで上がった。
「先生も脱いでください。靴下も脱いだ方が滑らなくていいと思いますよ」