bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

少しだけ休んでどうにか体調も良くなったので、フロアに戻る。


まだ、唯野主任との一件のせいで気持ちはフワフワと落ち着かないけれど、それでも本郷主任の言葉もあって、残りの時間は仕事に集中しようと思っていた。



フロアの入り口の前で大きく1度深呼吸をして本郷主任のデスクまで一直線に足を進める。

近づくだけで足がすくむような緊張感が増していく。

本郷主任のデスクの前で立ち止まると、机を背にして本郷主任は商品のパンフレットのチェックに勤しんでいた。



「本郷主任、先程はご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした」


これ以上ない程に頭を下げる。

「おう」

その一言だけが聞こえ、私は静かに頭を上げた。


「謝ってる暇があったら、仕事しろ」

いつもなら怒鳴るはずの言葉も、本郷主任は私に背を向けたまま静かに言った。


もう一度お辞儀して私は自席に戻る。

 

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