bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
起きたら彼氏
晴れきって透き通った朝の光がカーテンの隙間から入ってくる。
9月に入り、少しだけ秋めいてきた朝は少しだけ涼しく、タオルケット一枚では忍びない。
それでも今日は背中から暖かな肌のぬくもりがあって、幾分暖かい。
ん?肌のぬくもり・・・。
そう思って、ゆっくりと重たい瞼をこじ開ける。
私が頭をもたれているのは私の腕とは違う太くて、白いのに浮き出た血管やしっかりとついた筋肉で男性のものだとすぐに分かる。
二日酔いなのか頭が脈打つように痛くて思考が停止したまま、それ以上のことを考えることが出来ない。
鉛になったように重くて動かすことが億劫になりそうな身体をどうにか起こすと、私は自分が下着すら何一つ身につけていないことに愕然とする。
あたりをよく見ると寝ているベッドは私の家の前ではない。
ほとんどものが置かれていないシンプルな部屋にあるのは、黒をベースにしてある家具が置かれている。
「ここ…」
明らかに私の家でない場所で私は何も纏わない姿でいる。
そして、後ろには彼。
「やっちゃった…」
全てが走馬灯のように思い出されて、後ろで聞こえる規則正しい呼吸音の発信元を振り返って見つめた。
長い前髪が横に流れて、整った顔立ちがはっきりと分かる。
薄い唇の周りに、一晩経って少しだけ生えた髭さえも絵になるように美しい。
「寝ててもイケメンなんてずるいよ。唯野主任・・・」
1人でぽつりと呟いた。