bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「これ、おいしい」
私がフルーツが宝石のように入っているサングリアを一口飲んで笑顔を見せると、隣で唯野主任が微笑んでいた。
唯野主任が連れて行ってくれた生パスタのお店を後にして、近くのバーに入った。
黒を基調とした薄暗い店内、ゆったりとしたJAZZが流れていて、小上がりの個室にラグのあるクッション席に隣同士で私たちは座っていた。
初めての唯野主任と二人きりの雰囲気に緊張した1杯目に始まり、唯野主任に勧められるがまま、もう何杯と数えるほどの思考が残っておらず、このバーのサングリアに至った。
「ひかりちゃん、かわいいね」
私の横顔を見ながら、少しだけアルコールが入って顔を赤らめている唯野主任。
薄暗い店内の間接照明に照らされた唯野主任はいつも以上に色気を帯びている。
その色気に私が見とれるように見つめているとカウンターの上の私の右手に唯野主任は指をからませた。
「えっ?」
アルコールのせいでいつ思考が停止してもおかしくない状況でも驚いて声を上げると、唯野主任はいつも以上に微笑んで見せる。
それでも、その瞳の奥は、まるで獲物を狙う獣のように鋭さと強さがあり、私はその瞳に捕えられて離れることが出来なくなってしまった。