bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「ひかりは、結婚したいの?俺と?」
何の感情も入ってない、今まで見たこともないような冷たく発せられた唯野主任の言葉に私は戸惑いながらも
「えっと…、今すぐとかじゃなくて、いずれそうなればいいなって思って…」
自分の声が驚くほど小さいのが分かる。
どうにか絞り出したその言葉を聞きなが ら唯野主任は大きくため息をつきながら
「そう…」
一言だけ相槌を打ちながら眼鏡を外す。
「もう、夕食なんていらない」
さっきまであんなに穏やかな笑顔を浮かべていた唯野主任とはまるで別人のように、言い放ったその言葉を私が飲み込む前に、唯野主任は私との距離を詰めてくる。
なんだかいつもの唯野主任じゃなくて、それでいて、眼鏡を外したその瞳はまるで野獣が獲物を狙っているような鋭さを秘めている。
私は少し怖くて数歩だけ、後ずさりしたけれど、壁に追いやられる形になってしまう。
背中にキッチンの冷たい壁の温度を感じていたら、唯野主任は私に熱い唇を重ねてきた。