bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
気持ちを切り替えたくて、給湯室で空になったマグカップを片付けていた。



「安藤、コーヒーまだ残ってる?」


給湯室の入り口に背中を預けて、本郷主任が立っていた。



細身のスーツを着た本郷主任を夕陽が照らしていて、つい美しいと思ってしまった。

「どうしたんですか?珍しい」



あまりにも驚いて、つい口走ってしまうと本郷主任は不機嫌そうに呟きながら

「なんだよ。別にないなら、いらない」


そう言って給湯室を出て行こうとする。



私は思わず本郷主任のスーツの裾を掴んでしまった。

本郷主任はびっくりして目を丸くして振り向いたから、逆に私の方がその反応に戸惑って意識してしまう。


「コーヒーならあります。ちょっと待ってください」



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