bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

片付けも終わり代わりのマグカップにコーヒーを淹れて、本郷主任に渡すと


「ありがとう」



そう言って、その場で一口コーヒーを啜った。



「お前、今幸せか?」



急に本郷主任に尋ねられて、唯野主任とのことだとすぐ分ったけれど、どう答えていいか分からず、ただ何となく微笑んで見せる。



本郷主任はそんな私を見てフッと鼻で笑って



「まぁ、お幸せに。」



そう言って、フロアに戻って行った。



昼にエリカ先輩に言われた言葉と全く同じ言葉。



それでも私は怒りなんて湧き上がってこなかった。



むしろそう言ってフロアに戻って行ってしまった本郷主任がどこか遠くに行ってしまうような感じがして、涙が溢れてきそうになって思わず唇をかみしめた。

 

どうして、こんな気持ちになるんだろう…

 

本郷主任がフロアに戻っていく後ろ姿を見ながら、私はそのことばかりを考えていた。

 


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