bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


「さすが、裏ボス」


明らかにシュンと小さくなっている二人の主任と怒る香奈子先輩の図を見て、私の隣に座っていた神部君が耳元で囁いた。


私は呆気にとられながらも、その言葉に頷くことしかできなかった。




「見てよ。この雰囲気!!どうすんの?こんなバカみたいな喧嘩を部下にみせて、どうすんの?」



香奈子先輩にそう言われて、本郷主任は小さく舌打ちして、拳を強く握っている。



「内海さん申し訳ありません。皆さんもすみません。」

唯野主任はそう言って、小さく謝る。



「ちょっと頭冷やしてきます。…それから、本郷さん、なんでも手に入れることが出来ると思ったら大間違いですから」



そう言い捨てるかのように呟くと、唯野主任は会議室を出て行った。

 


本郷主任は、何でも手に入れているの?

主任という地位は、唯野主任も同じ。



他に何を手に入れているというのだろう。

 



付き合っているというのに、唯野主任の発した言葉の意味すら分からず、ため息をつく。




それと、ほぼ同じタイミングで、エリカ先輩は唯野主任を追いかけるように深刻な顔をして会議室を出て行ってしまった。



香奈子先輩と本郷主任はその光景をまっすぐに見つめている。



私は、その様子をどこか客観的に見ながら何もできずに座ったまま動けずにいた。

 
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