bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


私たちが社食からフロアに戻ると、主任の怒鳴り声が聞こえたので、思わず背筋が伸び、入り口で足が止まってしまう。


「何回言ったら分かるんだよ。この書類、どうすんだよ。」

怒られているのは、もう40歳を超えた大石さん。

どう見たって、本郷主任の方が後輩に見える。

それでも、頭を下げ、本郷主任に何度も謝る大石さんに

「・・・ったく。今日中にお願いしますよ」

本郷主任はそう言って、威嚇するかの様な大きな音でデスクを叩いた。


入口で動けずにいる私たちの真横を通り過ぎ、フロアを出て行こうとする本郷主任に軽く会釈すると、明らかに不機嫌なオーラを放ちながら立ち止まって、


「お前ら、3分遅いぞ!!勤務時間は守れよ」
「すいません!!!」


本郷主任の怒りの流れ弾が私たちにまで、あたってしまった。


慌てて謝って、自席に戻ろうとする私に

「安藤!!!お前、毎日毎日、朝礼笑おうとするな!!!集中しろ。」
「すいません!!!」

本日、二発目の流れ弾に当たってしまった。


いつもそうだ。

本郷主任は、誰かを怒るとクールダウンなのか喫煙所に行っている。

きっと今日もそう。

そして私の嫌いな煙草の匂いを漂わせてフロアに帰ってくるんだ。


毎回、ジャスト5分で。
 
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