bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
会議室の窓から見える銀杏の木も徐々に散り始め、都会の狭い空が夕焼けに包まれようとしている頃、長引いていたプロジェクトの会議がようやく終わる。
あと2時間ほどで終業時刻だというのに私は、次の取引先とのアポの約束の時間まであまり時間がなくて、片付けもそこそこにフロアに戻る。
必要な資料を準備して、バッグにいれながら、ふと社用の携帯電話を会議室に忘れたことに気付く。
「はぁ。何、初歩的なミスやっちゃってんの。私」
会議の間、唯野主任とのことがちらついて、集中できていなかったことを反省しつつ、若干の自己嫌悪に陥る。
ため息をもう1つだけ小さくついた私は、会議室に急いだ。