bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
残された私たちは、今まさに付き合って3ヶ月、修羅場を迎えたカップルの図になっていた。
それでも、何も言えなくて、いや、言ってしまえば次の仕事に支障が出てしまうことが分かっている冷静な自分がいるから何も口に出来ない。
「私、今から取引先との打ち合わせがあるので」
俯いたままどうにか言葉を紡いで、
「あぁ」
と返事をする唯野主任の声を聞き流しながら、急いで携帯電話を握りしめ、その場を離れようとした。
「エリカのことは、断れなかっただけだ」
私の背中に低くて、苦しそうに声をかける唯野主任に、
「はい。」
一言だけ、小さく頷いて答えて、私は下唇を噛みしめて廊下を急ぎ足で歩いた。
キスしていたことも、
その相手があのエリカ先輩だったことも、
唯野主任が、エリカと呼んだことも
エリカ先輩に言われた言葉も
思い出せば思い出す程、深い絶望的な気分に苛まれた。