bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
直帰しようとも思ったけれど、今日の打ち合わせをまとめたくて会社に帰ってきた頃には、もうとっくに定時を過ぎていた。
フロアは、電気だけがわずかについて居て、誰もいなかった。
自席に座り、大きく息を吐くと、この数時間思い出さないようにしていた昼間の会議室の光景が鮮明に思い出されて胸が苦しくなる。
唯野主任とエリカ先輩…、キスしてた。
これって浮気だよね?
この前、一緒に飲んでいたし…。
いつも、唯野主任は誰にでも優しい。
本当は、ずっと私にだけ優しくしてほしいって思ってるのに。
最初の頃は、眺めるだけでキュンキュンしていた私の唯野主任に対する欲望は、いつの間にか独占欲の塊のようになってしまっているのに気付いてしまって…。
それでいて、本当に好きなのかと問われたら今でもよく分からない。
きっと独占したいって気持ちが好きという気持ちとイコールなんじゃないかなって1人で考えていた。
「わがままになってるだけなのかな」
ドロドロとした気持ちに一言だけ漏れでた言葉。
そんな混沌とした思いばかりが頭の中でぐるぐると回っている。
そんな自分で向きあいながら、カバンから資料を取り出し、パソコンに向かう。