bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「やっぱりあれから色々考えたけど、別れよう」
向かいに座り、ネイビーの長袖ニットを着て眼鏡をしている唯野主任も、同じようにコーヒーを一口啜った。
付き合い始めた頃は、まだ暑くて半袖シャツだったのに、あっという間にもう冬がそこまで近づいてきていた。
「はい。わかりました。…ていうか、なんかこうなるんだろうなって思ってました。」
私は無理やり口角を上げて、笑って見せた。
この恋愛が終わりに向かっているということは、確かに自分でも分かっていた。
この前の唯野主任と本郷主任の話を聞いてしまった時からではなく、それよりもっと前、エリカ先輩とのキスを見た時、それともエリカ先輩と逢っていたところを見た時、もしかしたら初めから。
結局、いつからかなんて分からないけれど、この恋愛に終わりがあることは分かっていた。
だけど、この恋愛が終わると確信したのは、唯野主任と本郷主任の話を聞いてしまった時だった。
終わると確信していて、この10日間で覚悟なんてたくさんしたつもりでいたけれど、やっぱり別れを切り出されると、胸が突き刺さるように痛みを覚えた。