bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「ひかり。ひかりには本当は、心の中に別の男がいるだろう。」
店を出ようと、もうとっくに冷えてしまったコーヒーを唯野主任は飲み干し、その言葉だけを残して去って行った。
1つの恋が終わった。
初めての社内恋愛が呆気なく終わりを迎えた。
別の男。
唯野主任が置き去りにした言葉に、本郷主任の顔がちらっと頭をかすめた。
「まさか」
傘をさしながら駅に向かう唯野主任の後ろ姿を喫茶店の窓から眺めながら、私は1人小さく呟いた。