bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
午後6時、朝と同様に時計のかわいらしいオルゴール音が鳴り響き、終業時間を知らせる。
「じゃ、ひかり。また明日ね」
急いで帰り仕度をしている香奈子先輩が私の肩を軽く叩いて帰って行った。
香奈子先輩だけでなく、家庭を持つ主婦OLのお姉さまたちは我先にとタイムカードに打刻していた。
「お疲れ様です」
いつものようにパソコンと格闘しながら、声だけの挨拶をする。
「今日は、もう少しだけ・・・」
パソコンとにらめっこすること約30分。
気がつけば広報チームの島は、本郷主任、男性社員の先輩方と私だけになっていた。
もちろん、統括チームにも、企画チームにもまだまだ社員は残っている。
帰りたくても帰れそうにない家庭を持った女子社員だっているのが分かるから、なんだか切ないが、これが一般的な会社の姿なのだろう。
広報チームの帰りの早さが異常なだけだ。
1人で勝手になんだか切ない気分に浸っていると、本郷主任が背伸びをしている姿が目に入ってきて現実に舞い戻る。