bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
私は2人の顔を交互に見つめると、前島さんは少し困ったように笑いながら、持っていた焼酎を一口飲んだ。
「実はね、安藤さんがさっき会社で席外している間に、本郷主任に神部君と僕に安藤さんが落ち込んでいるようだから、ご飯食べに連れて行ってって頼まれたんだよ」
「俺は、本郷主任も誘ったんだけどね」
私は驚いて目を見開いて2人の顔を見ると
「本郷主任、俺が行くとややこしいことになるからって言って、そそくさと帰ったからね」
神部君が苦笑いしながら本郷主任の口調を真似する。
「ややこしいってなんだよー。本郷主任の今まで絶対飲み会不参加なんてなかったのに。やっぱり日曜はプライベート優先ってところかな」
神部君が本郷主任の不参加の理由をブツブツと勝手に言っている横で、全てをお見通しとでもいうような顔を私に見せる前島さんは
「今日、安藤さんをご飯に誘わないなら、仕事の量を後3倍増やすって脅されたからねー。仕事の鬼は、安藤さんのためなら完全なパワハラまでするからねー」
本郷主任の口調を神部君のように真似して楽しそうに、そしてちょっと意地悪そうにこっそり笑って見せた。
「ありがとうございます。」
2人にそう言って頭を下げる。
「だったら、飲め―」
私が急に改まってしまったことがちょっと気恥ずかしかったようで神部君は、私の空いたグラスにビールを注いだ。
目の前にいる二人にはもちろん、今日だって、いつだってちょっとした変化に気付いて、すぐにどうにかして手を差し伸べてくれる本郷主任に心の底から感謝した。