bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


「痛い!!!」

「大丈夫か、安藤」




私が声を上げるのとほぼ同時に本郷主任が私を支えてくれて、私は本郷主任の腕の中にすっぽり収まる形になってしまった。




本郷主任の腕の中は、やっぱり甘いムスクの香水とほろ苦い煙草の匂いがして、アルコールのせいも相まって私はこの腕の中でしばらくこうしていたいという感覚に襲われそうになる。




「やっぱり、送る。安藤1人じゃ危なすぎるだろ」


私の願いとは裏腹に本郷主任は私を腕の中から直ぐに解放した。




「すみません。それじゃあ、お願いします」



解放されると急に段々と恥ずかしくなってくる。




本郷主任を盗み見ると今日は、ウーロン茶しか飲んでいないはずなのに顔が真っ赤になっているのが分かった。

「ほら、行くぞ」



赤らんだ顔を見られたくないようで、本郷主任は私の手首を握り、グイグイと引っ張って歩き始めた。

 
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