bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

「安藤、お前今日のこと忘れろよ」



隣でぶつくさと呟いて、本郷主任は長く息を吐きだすと私の身体を急に抱きしめた。




お互い座っていたからなんだか変な抱擁の形になってしまっているけれど、そんなこと考える余裕なんてなかった。




「今日は胸貸してやる。泣きたいだけ、泣け。」




耳元で言われた言葉はいつものぶっきらぼうな口調だったけれど、その奥にある優しさが私の心を満たし始めていた。




「そうそう、ついでにあいつに振られた分も泣け。そしてもう忘れろ」



苦しげで、悲しげで、切なげで、そう呟いた本郷主任の言葉。






私はそれから本郷主任の腕の中で涙が枯れるほど涙を流した。


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