bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「この、役立たずの目覚まし時計!!!」




いつの間にか自分で目覚まし時計の音を止めていたようだったが、八つ当たりする相手がいなくて、持っていた目覚まし時計は自分のベットに投げ捨てた。




始業の9時なんてとうに過ぎていて、慌てて携帯電話を探すと、昨日持っていたバッグの中にあって、香奈子先輩と神部君から何度も着信履歴が残されている。



一件だけ本郷主任の着信履歴もあったから、私は青ざめた。


「やばい!!!急がなきゃ!!!」





さっきまでズキズキと痛んでいたはずの頭の痛みも気にするなんて余裕はなく、私は急いでシャワーを浴び、着替えて、化粧なんていつもの3割程度の超がつく程の薄化粧で玄関を飛び出した。




シャワーを浴びながら、今日は熱が出たなんて仮病でも使って、有給休暇を消化をしようという考えが私の頭の中によぎった。





けれど、そんなことしたら本郷主任に認めてもらえないということだけがとにかく悲しくて、悔しくて私はそのずる賢い考えをシャワーと一緒に排水溝へと流したのだった。

 

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