bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
「安藤、コーヒーいつもありがとうな。それから…」
本郷主任が何を言いかけていたのか、気になったが、それよりも本郷主任の「ありがとう」という言葉に何だが胸が熱くなって、ちょっと涙が出そうになってしまう。
心の奥から暖かいものが溢れだして、胸一杯に広がっていく。
胸一杯では収まりきれず、頬が赤らんでくるのが自分でも分かった。
メールチェックをしようと思っているのに気付いてみたら、本郷主任の事が気になってしまって、つい目で追ってしまっていた。
自分の淹れたコーヒーを幸せそうに飲んでいる本郷主任の姿がたまらなく嬉しい。
フロア内でこのオリジナルブレンドのコーヒーを飲んでいるのは、本郷主任と私だけ、それだけでなんだか嬉しくて思わず口元がゆるんでしまった。
「明日も、このコーヒーにしようかな」
1人そう呟きながら、砂糖をたっぷり入れたコーヒーを1口啜った。