bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-

隣で目を見開いて思わず一口分のご飯を落としてしまった香奈子先輩の

「今さら、自分の気持ちに気付いたの?」



その言葉で、自分の呟きが聞かれていたことに気付いて、顔面から火を噴きそうなほど瞬時に熱を帯びていくのが分かった。



「えっ?香奈子先輩、知ってたんですか?えっ!!!」




狼狽する私なんかどこ吹く風といった様子の香奈子先輩は、いつもの涼しげな雰囲気に戻りながらも小悪魔な笑顔を認めて、

「ばればれだけどね…」

と笑っていた。





「もー、絶対言わないで下さいよ。部下には手を出すつもりないって言われたんだから。昔」

「はいはい。わかった、わかった」



そう言って、本郷主任の言葉を思い出して、この恋は叶わないのだと思ったら胸が苦しくなってしまった。






それでも今は自分の気持ちをはっきりと理解できたことで、なんだか胸のつかえが取れたのようにすっきりとした心持だった。

 

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