bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
部下でいさせて
正月休暇も終わって、すれ違う社員との挨拶は「あけましておめでとうございます」から「お疲れ様です」へいつの間にか戻っていて、いつもの日常が戻ってきていた。
そんなある日の午後、社外でのミーティングが終わって会社の正面玄関に入ろうとした時だった。
「安藤さーん」
聞きなれたさわやかな声が私の背中に声をかけてきた。
ゆっくり振り返ると、どうやら同じタイミングで会社に戻ってきたらしい神部君が大きく手を振りながら近寄ってきた。
「お疲れー。今、帰り?」
「うん。取引先に新年の挨拶にね。それにしても、寒ぃ」
肩をすくめて、カタカタ震わせている神部君を見ていると、ただでさえ寒いのにさらに寒さが増したような気分になる。
たしかに会社の玄関先はビル風のせいなのか風も強くて、一刻も早く暖をとりたくなる。