bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


どの位の時間突っ立ったまま泣いたのだろうか。




「…ああ、もう」



そう呟いた本郷主任に、私は急に抱きしめられた。



暗い会議室でもう涙なのか鼻みずなのかさえ分からないぐちゃぐちゃの顔を思いのほか強く抱きしめられたせいで、私は本郷主任の胸にその顔を押し当てられた。




本郷主任は、いつもの煙草のほろ苦い香りと甘いムスクの香りを纏っていて、その香りに包まれると急に胸の鼓動が速くなのが分かった。





本郷主任は私が少し落ち着くまで、抱きしめたまま背中や頭を撫でてくれた。




その大きな手が大きくて、暖かくて妙に心が落ち着いていく。

 

「・・・辞めねえよ。」





少しだけ私の涙が落ち着いてきた頃、いつものぶつくさと口調で頭の上から降ってきた。

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