bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-


「いやぁ、でもびっくりしたわぁ。唯野主任が会社辞めるなんて」



久々に近くのカフェで香奈子先輩とランチをしていた。


近くの会社のOLで賑わう店内で、カルボナーラを食べながら、香奈子先輩は少し複雑な表情で笑っていた。


「そうですね」



その表情を見ながら、私も少しだけ胸の傷が痛む。



今朝の朝礼で、唯野主任の退職の報告があった。



フロア内にいた全社員に動揺が走ったのは言うまでもなく、10日前から知っていた私でさえ、本人の口から退職の報告を聞くとやはり動揺せずにはいられなかった。




隣の席の香奈子先輩を覗くと、やはり先輩も動揺しているようだった。



ふと本郷主任と目が合ってしまい、また睨まれると思って背筋を伸ばした。



けれどその視線は、私を心配しているような眼差しだったから、なんだか少し照れくさかった。

 
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